2010年 10月 14日
大規模リノベーションの可能性を探る |
先日、建築家集団 若建の企画で建替事業中であるひばりが丘団地(東京都東久留米市)の解体予定の3棟を活用して、ストック再生実証試験の現場を視察してきました。
この計画は、UR都市機構が「エレベータのない階段室型団地」を有効に活用することを目的に、ハード・ソフト両面から再生手法を実証する試みで、耐震補強や断熱、防音など最先端の技術を活用した大規模な実証試験現場です。
最新の建築技術を駆使すればコンクリートの壁や梁までも超高圧水のウォータージェット工法で撤去することが可能です。しかも一人の職人がハンドガンを持ってコンクリートの壁をぶち抜くなんて映画の世界のようですね・・・建築技術の進歩は目を見張るものがあります。ただ気になった点は梁せいの縮小によるリニューアルです、新規に補強配筋をすることで計算上の安全性は確保できるものの端部梁筋の壁定着や補強方法が明確でなく、既存の壁に集中的に応力が加わることによる構造上の不安を強く感じました。
“団地改修”の技術・工法を確立させるためにバリアフリー化、内装・設備の近代化などに加え、低床化、1.5層化、2戸1・4戸1改修による居住空間の拡大等々、色々な方法を試しながら快適な居住空間を求めているにも拘らず、根本的な川の字型の配置よる魅力のない外部空間には計画そのものの限界を感じてしまいました。そして建築費が新築した場合に比べ一割から二割しか減額にならないと聞きびっくり、・・・そんなに膨大な建築費を注ぎ込むのであれば新築計画時にランドスケープデザインを取り入れ、豊かな外部空間を感じさせる居住空間を建築家とともに計画する方が間違いなく良いものを提案できると確信しました。
こんなに素晴らしい環境に囲まれながら、高さ30メートル程のケヤキの景観を眺められるのは北側に配置されて一棟のみ、しかも北側の通路からしか眺めることができません。
南側のバルコニーに出てこんな外観を見て暮らすことを想像してみても新築時の90%のコストを掛けてのリノベーションでは納得いきません。快適な居住環境を考えた時、建築の内部に目がいきがちですが、もっと大きな視点から考えなおす必要があるのではないでしょうか・・・。(記事:design kensyo 浪崎)
by wakakenn
| 2010-10-14 17:21
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