2008年 07月 05日
トータスハウスのインテリア“珪藻土砂浜仕上”のお披露目 |
この仕上げは私の記憶にある原風景、愛知県渥美半島の海食崖や荒波が打寄せ波が引いていく時に砂浜に残された砂利や貝殻が浮かび出す風景をイメージして造りました。
海食崖とは地面の断層に太平洋の荒波が打寄せ、大地が削り取られ表面に砂利や貝の化石が現れた美しい地層を持った渥美半島特有の崖のことで、海岸沿いの柔らかい地層でないと、めったに見ることは出来ません。
トータスハウス(海亀の家)、いよいよ内壁の仕上げに入ります。
海亀の家にふさわしいように、内壁には珪藻土の砂浜仕上げを提案させて頂きました。
ヒビ割れ防止の為、下地のボードは2重貼りとし、更にグラスファイバーメッシュを壁全体に貼り十分な補強をします。下塗り壁に波模様を描き、前もって波目に厚みを付けておきます。
珪藻土には現場でバーミキュライトや顔料などを混入して独自の表情を作り出します。
石は当日の埋め込みだとブラシ掛けの時に取れてしまうことがあるので下塗り時点で固定させておきます。
石にも一つひとつ顔があります、埋め込む緑化石を選別し、中央に大き目の石を入れ徐々に小さくしてバランスをとります。
左官は私が最も信頼している巧工芸社の鈴木忠さんにお願いしました。
職長の八巻さんです、左官では一番難しいといわれている“大津磨き”などの和風の磨き壁の世界ではトップレベルの腕前のようです。
コテ絵のコンクールで入賞するほどの腕前で、見事なコテさばきに見とれてしまう程、・・・コテが走っているので手先がぶれて写っています。
手前の矢島さんはとても研究熱心で、石灰のコテ磨きなど洋風磨き壁を得意とし、前回の現場では珪藻土のトラバーチン仕上げや漆喰白浜仕上げなど多彩な技を発揮してもらい、お施主さんからも大変喜んで頂きました。
珪藻土の上塗りが終わり、ようやく私の出番が来ました。壁が柔らかいうちに砂利の投げ入れを行います、黒耀石や桂砂利など一分程度の大きさの砂利を手に握り、豆まきのように壁に投げつけます。投げる人によってバラツキが出やすいので私が一人で投げ入れました、・・・ガンバリすぎて、翌日は手が痛くて図面が引けませんでした。
波のラインを出す前に通常のワイヤーブラシで平滑に荒掻きを行います。
いよいよ、ライン出しの工程です、この工程で壁の主要なデザインが確定されるので私自身がブラシ掛けを行います。ラインを出す部分と荒掻きだけの部分のバランスを確認しながら、その場で瞬時に判断し描き出していきます。表情を荒々しくする部分は特殊なワイヤーブラシを使って表面にライン状の起伏をつけていきます。通常はムラが出ないようワイヤーがランダムに埋め込まれていますが、ここで使用するワイヤーブラシは波目を出す為に一列に並んでいます。
最終工程では硬くなった壁の表面のノロを取り去り、細かい砂の粒子が出るまで根気よく何度もワイヤーブラシを当てて、ようやく完成です。。
自然石を割った断面のように、骨材の粒々まで美しく表れています、この表情までブラシ掛けするには職人さんも、かなりやる気がないと出来ません。
オフィスのエントランスです、トップライトからの光が時間とともに変化し、自然界の浜辺を連想させるような“珪藻土砂浜仕上げ”のデザイン壁の完成です。
オフィスのメイン壁面には本物のアンモナイトの化石を埋め込みました。
珪藻土に取り組み15年になりますが、図面指示だけではけして満足のいく仕上がりにはなりません、私も含めた専門のチームを構成し、責任施工で行います。現場でのピリピリした緊張感の中、それぞれの技を出し合って完成させたとき、だれも言葉にはしませんが、その場の空気で仕上がり具合の良し悪しは伝わってきます。いい仕事を成し遂げた時、職人達の目が輝いているんです、・・・この仕上がりなら絶対にお施主さんも喜んでくれる、みんなありがとう、お疲れさん!
詳しくは 自 然&建 築 Design BLOG で (記事:浪崎)
by wakakenn
| 2008-07-05 16:13
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